いわゆる風邪の原因は、80~90%がウイルスです。
最近はこの中でもマイコプラズマが流行していますが、年間を通して考えれば、ウイルス感染が圧倒的に多いです。
抗菌薬とは、細菌の増殖を抑制したり、退治するための薬です。
よって、ウイルスが原因の風邪に抗菌薬を使っても効果ありません。実際、風邪に対して抗菌薬を処方する機会はそう多くはありません。
風邪に対しては、基本的に対症療法です。対症療法とは、症状を和らげるための治療です。例えば、熱やのどの痛みがあれば解熱鎮痛薬、咳があれば鎮咳薬などです。
それは急性胃腸炎に関しても同様のことが言えます。腸炎でも多くは対症療法です。
抗菌薬を欲しがる患者さんは多くいらっしゃいます。そして抗菌薬を風邪薬のように処方する医師も多くいます。日本では諸外国に比べて抗菌薬が乱用されていると言われています。
また、患者さんの中には、以前に処方された抗菌薬を自己判断で服薬している方もいます。
では、なぜ抗菌薬の乱用がよくないのでしょうか。
おもに理由は2つあります。
一つ目は、適切な抗菌薬治療を行わないと、その抗菌薬に効かない菌(耐性菌)が出現してしまいます。そうなると、将来その抗菌薬を本当に必要とする時に効果を発揮できなくなります。
2つ目は、副作用の問題です。抗菌薬に限らず、絶対に副作用がない薬はありません。飲む必要がない薬を飲んで、副作用だけ出てしまうような不幸は避けたいところです。
よって、私が抗菌薬を処方するときは、必要性を十分吟味してから処方しています。その患者さんの将来を案じることも医師の役割だと思っています。
また、抗菌薬を自己判断で服薬してから受診すると、痰、尿、便などを採取する細菌培養検査を行った時に、原因菌を特定できなることがあります。医師からの指示がある場合以外は、自己判断で抗菌薬を飲むことは避けてください。
とは言え、抗菌薬が必要な場合も多々あります。その場合は、「抗菌薬は怖い」などと思いこまず、しっかり飲んでください。
風邪症状において、抗菌薬を処方するのはおもに以下の場合です。
・化膿性の扁桃炎・咽頭炎
・細菌による気管支炎・肺炎
・ウイルス感染に続く細菌感染(2次感染)
・その時の流行をふまえて必要と判断した場合(例えばマイコプラズマ)
抗菌薬が処方された場合は、自己判断で中止せずに、副作用が出ない限りしっかり飲み切ってください。中途半端な服薬は耐性菌の出現を招きます。
~まとめ~
・自己判断で抗菌薬を飲まない。
・抗菌薬を処方されたら、副作用が出ない限り必ず最後まで飲み切る。