「バリウムと胃カメラはどちらがおすすめですか?」
「胃カメラを受けたいと思っているけど、辛いからバリウムを受けている」
などの声を聞きます。
胃透視検査を通称「バリウム」、上部消化管内視鏡検査を通称「胃カメラ」と言います。
バリウムと胃カメラのどちらがおすすめか?
結論から言うと、ほとんどの場合、診断能において圧倒的に胃カメラの方が優れています。
ではなぜバリウムが検診で行われるのでしょうか。
・一人当たりの所要時間が胃カメラより短い。
・バリウムは放射線技師も行うことが出来る。
・内視鏡医が足りない。
ただし、バリウムを受けた人の死亡率が、受けなかった人に比べて40~50%減少したというデータもあるため、全く意味のない検査というわけではありません。
バリウムと胃カメラのメリットとデメリットを説明します。
バリウムのメリット
・胃の全体像をとらえられる。
・スキルス胃がんはバリウムの方が発見しやすい場合がある。
バリウムのデメリット
・小さい病変を発見することが困難。
・粘膜の色調変化をとらえることが出来ない。
・平坦な食道がんを発見することが困難。
・バリウムによる腸閉塞のリスク(特に高齢者、便秘気味の方は注意が必要)。
・バリウムを誤嚥することがあるため、高齢者には不適。
・検査後に下剤を飲んでバリウム便を出し切る必要がある。
・人体に影響のない程度ですが、少量の被ばくがある。
・異常があった場合に、結局胃カメラが必要になる。
胃カメラのメリット
・小さい病変を発見できる。
・粘膜の色調変化を観察できる。
・食道がんの発見率が高い。
(食道がんは内視鏡専門医であっても注意して観察しないと、胃カメラでも早期発見が難しい)
・生検(病理検査)が可能。
胃カメラのデメリット
・鎮静剤(眠くなる薬)を使わないと、辛く感じることが多い。
(一方で、鎮静剤を使わないでも平気な方もいます)
・のどの麻酔薬(キシロカイン)によるショック。数万人に1人の確率。
・嘔吐反射による出血。
胃カメラを受けたいけど過去に辛い経験をした、あるいは辛い経験を聞いて胃カメラを避けている方がいます。その方たちが受けられるようにするためには、以下のことでほとんどが解決します。
・経口内視鏡ではなく、経鼻内視鏡にする。
・鎮静剤を使う。
経鼻内視鏡は、鼻から細いカメラを挿入するため、嘔吐反射を半減できます。ただ、経鼻内視鏡でも強い反射が出てしまう人もいます。経口内視鏡で辛い思いをしたかたが、経鼻内視鏡を受けた場合は、「こんなに違うんだ」と感じると思います。約9割の方は経鼻内視鏡の方が楽だとおっしゃりますが、中には鼻が痛くて、経口内視鏡の方がよかったとおっしゃる方もいます。
最も有効な解決策は、鎮静剤を使用することです。鎮静剤を使用すれば、眠っているかボーっとしている間に検査が終わります。
鎮静剤を使用した場合は、絶対にその日は車や自転車の運転を避けてください。鎮静剤は、いったん覚醒して、その数時間後に再び眠くなることがあります。
その日の都合に合わせて、1日休みを取れる方は鎮静剤を使用した胃カメラ、半日しか休みを取れない方は鎮静剤を使用しない経鼻内視鏡を検討されては如何でしょうか。
もう一つ、経口内視鏡か経鼻内視鏡か選択する判断材料として、ピロリ菌に感染している方あるいは感染していた方は、できれば経口内視鏡をおすすめします。当院では最新の内視鏡スコープを導入しており、経鼻スコープでも画像が鮮明ですが、それでも比較すれば経口スコープの方が画像は鮮明です。諸々のことを考慮して選択して頂ければと思います。もしご不明なことがあればご相談ください。
胃カメラを受けることができない人はいますか?
基本的にほとんどの方が受けることができます。
ただし以下の方は、内視鏡を受けるメリットよりデメリットの方が上回る可能性があるため受けられません。
・全身状態不良の方。例えば、ショック状態の方、超高齢で検査を受けるメリットがない方など。
・妊婦の方。必要な場合は、対処できる病院をご紹介します。
・スタッフの指示に従えない方。
・泥酔している方。
~まとめ~
・胃の検査を受ける場合は、胃カメラをおすすめします。特に何らかの症状がある方は、バリウムにする理由がありません。
・胃カメラを受けることに不安な方、胃カメラで辛い思いをした方は、経鼻内視鏡や鎮静剤を使用した内視鏡をご検討ください。もちろん、鎮静剤を使わなくても辛くない方は、薬を使わないに越したことはありません。
※偉そうなことを言う私も、反射が強くて鎮静剤を使用しないと胃カメラを受けられません・・・。鎮静剤を使ってからはストレスなく、定期的に胃カメラを受けています。反射が強い人の気持ちは痛いほどわかります・・・。