ピロリ菌以外のヘリコバクター Non-Helicobacter pylori Helicobacter(NHPH)について
胃に感染する細菌はピロリ菌が有名ですが、正式にはヘリコバクター・ピロリHelicobacter pylori(H.pylori)です。ピロリ菌以外のヘリコバクター属(NHPH)にはHelicobacter suis(H.suis)、Helicobacter heilmannii(H.heilmannii)などがあります。
【感染経路】
H.heilmanniiはイヌ、ネコから感染、H.suisはブタから感染することが多いとされています。
【診断】
ピロリ菌は様々な検査(尿素呼気試験、便中抗原検査、血清ピロリ菌抗体検査など)でその存在を確認できますが、ピロリ菌以外のヘリコバクター(NHPH)はその確認が難しく、現時点で診断法は確立していません。研究レベル以外で有用な検査は組織検査(鏡検法)です。
さらにややこしい話になります。
血清ピロリ菌抗体検査はピロリ菌に対する抗体検査ですが、ピロリ菌以外のヘリコバクター(NHPH)でも陽性になることがあるという報告があります。健診で血清ピロリ菌抗体陽性といわれて当院を受診。内視鏡検査を受けたら、鳥肌胃炎などの胃炎の所見がある。でも尿素呼気試験では陰性という方がいます。その中には、ピロリ菌以外のヘリコバクター(NHPH)胃炎の方がいる可能性があると考えています。
つまり、内視鏡所見と検査結果が矛盾している場合は注意が必要です。
ただ、ピロリ菌の既感染(以前ピロリ菌に感染していたけど、除菌された場合)も同様の結果になることがあります。むしろこの場合の方が多いので、あまり神経質にならずに、粛々と定期検査を受けることをおすすめします。神経をとがらせるのは医師だけで十分です。
【治療】
基本的に、ピロリ菌と同様の治療を行います。つまり、除菌治療薬を1週間服用します。
【治療の必要性】
ピロリ菌以外のヘリコバクター(NHPH)胃炎は、ピロリ菌と同様、消化性潰瘍や胃MALTリンパ腫(悪性リンパ腫の一種)などの原因になることが報告されており、ピロリ菌感染胃炎よりも 胃MALT リンパ腫との関連性が高い可能性が報告されています。
ピロリ菌陽性の胃MALTリンパ腫は、除菌により70~90%が完全寛解するとされています。NHPH胃炎と併存するMALT リンパ腫において、NHPHの除菌により寛解に至ったとする報告例がみられ、除菌治療が有用とされています。
*MALTは“Mucosa-Associated Lymphoid Tissue(粘膜関連リンパ組織)”の略