報道されているのでご存じの方も多いかと思いますが、マイコプラズマ肺炎が流行っています。
注意が必要です。
といっても、マイコプラズマを聞いたことがあるという方はいても、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
マイコプラズマ肺炎とは
Mycoplasma pneumoniaeによる細菌性肺炎です。インフルエンザや新型コロナウイルス感染症などと同様5類感染症です。
感染経路はおもに飛沫感染と接触感染で、症状が出現する2~8日前から4~6週間以上排出され続けるとされています。潜伏期間は2~3週間で、ゆっくり増殖してから発症します。
新型コロナウイルス感染症は潜伏期間が長くないため、「あの時に感染したかな」と自覚することが多いですが、マイコプラズマ感染症は、潜伏期間が長いため、どの時点で感染したのかがわかりにくい感染症です。おもに、感染者と接触する時間が長い家族内や学校内での感染が多いとされています。
秋~冬に多い感染症で、発症した方の約80%は14歳以下ですが、当然大人でも感染します。
症状
潜伏期間を経て発症した後に、発熱、のどの痛み、頭痛などのいわゆる風邪症状が現れます。
その後咳が出現し、これがなかなか手強く、1か月ほど咳だけが続く場合も稀ではありません。なかには重症肺炎、そのほかの合併症を伴う場合もあります。
治療
抗菌薬(抗生剤)で治療しますが、効く薬が限られています。ちょっと専門的な余談ですが、マイコプラズマは細胞壁をもたない細菌です。よって細胞壁の合成を阻害する抗菌薬はマイコプラズマには無効です。
また、マイコプラズマには、ある種の抗菌薬が効かない耐性菌も多く、その場合はほかの抗菌薬で治療します。
ただし、成人で肺炎を伴わない場合は、抗菌薬による治療を行わないことが推奨されており、その状況により治療法が異なります。
感染状況
以下はマイコプラズマ肺炎の定点当たりの報告数です(国立感染症研究所のHPより抜粋)。
各集計時速報値(IDWR速報データ)
マイコプラズマ肺炎は、感染対策を行っていたコロナ禍で減っていましたが、公衆衛生対策が緩和されて以降、報告数が増えています。海外でも、新型コロナウイルス感染症の対策をしていた期間は、マイコプラズマ肺炎の発生が大きく減少していたことが報告されています。
手洗い、咳エチケットといった一般的な感染対策の重要性を再考すべきかと思います。