山椒はミカン科サンショウ属の落葉低木です。枝にはトゲがあります。
初夏につく未熟な果実は、佃煮やちりめん山椒として使います。
香辛料として用いられるのは、秋に熟した果実の果皮で、それを山椒と呼んでいます。
山椒といえばうなぎを思い出す方も多いのではないでしょうか。また山椒は、唐辛子、陳皮(ミカンの皮)、ケシの実、麻の実、ゴマなどとともに七味唐辛子の成分でもあります。
山椒の辛味成分であるサンショオールは、基礎代謝の向上や内臓器官の働きを活発にする作用があり、腹痛を和らげ、体を温めて胃腸の働きを助ける働きがあります。健胃、整腸、止痛、駆虫(回虫駆除)などの作用があります。
山椒が含まれている「大建中湯」は、私が処方する機会が多い漢方薬の一つです。
大建中湯は、山椒(サンショウ)、乾姜(カンキョウ=生姜)、人参(ニンジン)、膠飴(コウイ)からなります。山椒と乾姜は体を温め、人参と膠飴は補気(消化管に元気を与える)作用があります。西洋医学の観点からは、大建中湯は神経伝達物質であるアセチルコリンの分泌作用を持っているため、胃や腸の動きを活発にします。
効能効果は、ツムラの大建中湯は「腹が冷えて痛み、腹部膨満感があるもの」、コタローの大建中湯は「腹壁胃腸弛緩し、腹中に冷感を覚え、嘔吐、腹部膨満感があり、腸の蠕動亢進と共に、腹痛の甚だしいもの:胃アトニー、弛緩性下痢、弛緩性便秘、慢性腹膜炎、腹痛」となっています。イメージでいうと、お腹が冷えやすく便秘や腹部膨満感のある人、外科手術後の消化管運動が低下している人、腸閉塞を繰り返す人などに処方します。
大建中湯は、甘みがある一方、山椒と生姜の味がピリッと舌に伝わります。味の感じ方は、(どの漢方薬にも言えますが)人により異なります。大建中湯は冷えのある人(寒がり)に効果的なことが多く、冷えのある人は、大建中湯を甘く感じ、辛味を感じにくい傾向にあるようで、大建中湯が適するか体質なのかの目安になるとも言われています。
体を温め、胃腸の動きを助ける山椒。
うなぎに山椒をかけて、脂がのったうなぎの消化を助ける…。抜群の相性です。
先人の知恵ですね。