桔梗(キキョウ)と漢方薬
いま桔梗が咲いています。
桔梗は秋の七草の一つで、古くから身近な花として親しまれてきました。ご存じの方が多いかと思いますが、秋の七草は、ハギ、オバナ、クズ、ナデシコ、オミナエシ、フジバカマ、そしてキキョウです。春の七草と違い、秋の七草は観賞用です。
桔梗は6~9月に開花して、花の時期が比較的長い多年草です。
桔梗の根を乾燥させたものが生薬として使用されます。
桔梗根は、鎮咳、去痰、排膿作用、抗炎症作用があり、咳、痰、化膿性疾患、扁桃炎、咽頭炎などに用いられます。漢方薬の約15%に配合されています。桔梗が配合されている漢方薬の中で、私が処方する頻度が高い『十味敗毒湯(ジュウミハイドクトウ)』『竹茹温胆湯(チクジョウンタントウ)』『桔梗湯(キキョウトウ)』『防風通聖散(ボウフウツウショウサン)』について簡単に説明します。
十味敗毒湯(ジュウミハイドクトウ)
効能又は効果
化膿性皮膚疾患・急性皮膚疾患の初期、じんましん、急性湿疹、水虫
華岡青洲が創製したもので、化膿性疾患、皮膚疾患の初期にこれを消散する目的で、あるいはアレルギー体質を改善する目的でつくられたものです。
竹茹温胆湯(チクジョウンタントウ)
効能又は効果
インフルエンザ、風邪、肺炎などの回復期に熱が長びいたり、または平熱になっても、気分がさっぱりせず、咳や痰が多くて安眠できない者
桔梗湯(キキョウトウ)
効能又は効果
咽喉がはれて痛む次の諸症:扁桃炎、扁桃周囲炎
桔梗湯はキキョウとカンゾウのみから構成される薬で、カンゾウが3gと多めの割合です。よって、アルドステロン症、ミオパチー、低カリウム血症には禁忌とされています。
防風通聖散(ボウフウツウショウサン)
効能又は効果
腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちな者の次の諸症:
高血圧の随伴症状(どうき、肩こり、のぼせ)、肥満症、むくみ、便秘
大黄という成分を含んでいますので、便秘にも効果がありますが、(大黄は)依存性もあります。いわゆる「やせ薬」として多用されているケースがみられます。大黄を内服し続けると、大腸粘膜が大腸メラノーシスという褐色の粘膜に変化します。粘膜に色素が沈着するだけではなく、大腸の運動にかかわる神経も損傷されて、緊張のない腸になり、弛緩性便秘と言われる状態になってしまい便秘が悪化することがありますので、注意が必要です。とはいえ、適切に使えば有用な薬であることは言うまでもありません。