脂質異常症とは、LDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪が高い、またはHDL(善玉)コレステロールが低い状態のことをいいます。
一般的な基準値は、LDLコレステロール140mg/dL以上、HDLコレステロール40mg/dL未満、中性脂肪150mg/dL以上です。
脂質異常症と診断されても自覚症状はありませんが、脂質異常が続くと動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞など命に関わる病気を招く可能性が高くなります。その予防のために、コレステロールを適切な値に保つことが重要です。
LDLコレステロールが140mg/dL以上の方は、80mg/dL未満の方と比較すると、約4倍も心筋梗塞になりやすいというデータがあります(Imano, et al. Prev Med 52(5):381-6, 2011)。
中性脂肪は、エネルギー源として貯蔵したり、保温、外部からの衝撃を和らげるなどの重要な役割を担っていますが、多すぎはよくありません。中性脂肪(空腹時)150mg/dL以上が続くと心筋梗塞のリスクが高くなるとされております。また、中性脂肪が1000mg/dLを越えると急性膵炎発症のリスクが高まります。
では、治療は?
治療は生活習慣の改善と薬物療法です。
まず生活習慣の改善が必要です。
生活習慣の改善
- 食生活の改善
- 適度な運動
- アルコールを控える
食事は、カロリー制限、規則正しく食べる、動物性脂肪を減らす、食物繊維を多く摂取するなどを心掛けましょう。
飲酒量は1日に20gが適量で、週2回は休肝日をもうけましょう。具体的には、ビール500ml未満、日本酒1合未満です。ただし、高齢の方や女性はこれより少ない量にしましょう。また、飲酒が得意でない方、持病がある方も飲酒を控える必要があります。
運動は、1日30分以上の運動を3日以上(可能であれば毎日)が推奨されています。たさし、脱水にならないように十分な飲水を心掛け、体のどこかが痛くなる程の運動は控えましょう。大切なことは、「継続する」ことです。
薬物療法
おおまかですが、心筋梗塞や狭心症にかかったことがある方は、LDLコレステロール100mg/dL未満、糖尿病、脳梗塞、慢性腎臓病、末梢動脈疾患をもっている方は120mg/dL未満にコントロールする必要があります。ほか、男性、高齢、喫煙、高血圧、早発冠動脈疾患の家族歴、HDLコレステロール低値、耐糖能異常のある方は危険因子をいくつ持っているかでLDLコレステロールの目標値が異なります。何も持病がなく、危険因子を持っていない方でも、LDLコレステロール160mg/dL以上は高いと考えてください。
中性脂肪は、空腹時で150mg/dL未満、随時で175mg/dL未満にコントロールする必要があります。
よく受ける質問
よく「一度薬を飲み始めるとやめられないって聞いたことがありますが…」「LDLコレステロールが下がったら治療をやめていいですか」と質問を受けます。まず、薬を飲み始めると…というのではなくて、必要だから治療をするわけです(私の努力不足かもしれませんが、症状のない病気を理解してもらうことは、私の課題でもあります)。例えば若年の方で、明らかに生活習慣が乱れていて、生活習慣を改善させることで治療が必要なくなることはあります。しかしある程度の年齢になると、(もちろん治療開始後も節制は必要ですが)治療が必要なことが多く、命に関わる病気の発症を防ぐ目的で治療するわけです。データがよくなったら薬をやめる、悪くなったら再開するという一喜一憂するのではなく、つまりデータをよくして満足することが目的ではないのです。
また「LDLコレステロールを下げすぎると体によくないと聞いたことがある」とおっしゃる方がいますが、60mg/dL程度の低値であっても問題ないということが明らかになっています。高値だと狭心症や心筋梗塞の発症率を高めますが、低値だと何かの病気を発症しやすいという信頼できるデータはありません。
脂質異常症の方は、高血圧症、糖尿病、高尿酸血症など、ほかの病気を持っている方も多く、総合的に治療をしていくことが必要になります。
健康診断で指摘された方は、ぜひご相談ください。