当院には、「血便が出た」「おしりを拭いたら血が付いた」などの訴えで、多くの方が受診されます。
血便とは、“血がついた便“や“血“が肛門から出ることをいいます。
血便は、おもに大腸や肛門に病気が存在することが考えられます。その血便に関して説明いたします。
血便が出たとき、あなたはどうされますか?
「大腸がんかも・・・。すぐに病院に行こう」
「痔かな。よくあることだから・・・」
「また血が出たら病院に行こうかな」
など対応はさまざまです。
この記事を読んでいらっしゃる方のなかには、血便が出て心配している方がいらっしゃると思います。
確かに、痔が血便の原因である可能性がそれなりに高いのも事実です。しかしその中には、治療を要する病気が原因であることも事実です。
医師の立場からすれば、血便が出たら、必ず大腸がんを疑うことは鉄則です。
大腸がんからの出血(特に直腸がんからの出血)と痔からの出血の区別は、非常に難しいのです。例えば、大腸がんでも痔でも痛みがない場合もありますし、便が細くなる場合もあります。もしかしたら、痔も大腸がんも両方あるかもしれません。結局、大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)で確認する必要があります。
大腸がんの血便以外の症状として、以下のようなものがあげられます。
・急に便秘になった。
・便が細くなった。
・腹痛、腹部膨満感が続いている。
・下痢。
・貧血症状。
「便秘はわかるけど、下痢で大腸がん?」とおっしゃるかたもいると思いますが、実際に下痢と腹痛を訴えて来院されて大腸がんがみつかった人は少なからずいます。
繰り返しになりますが、いつもと違う便になったり、血便が出たり、腹痛が続いていた場合は、大腸カメラを受けることをおすすめします。
血便が出る病気は、がんだけでしょうか?
血便の原因として頻度の高いものを以下にあげます。
・大腸がん
・潰瘍性大腸炎
・大腸憩室出血
・虚血性大腸炎
・感染性腸炎
・痔核(痔のこと)
上記は頻度順ではなく、私が診療するにあたり、頭の中で考える順番です(症状や経過によっては順番が変動します)。
大腸がんは言わずもがな治療を要する疾患です。
潰瘍性大腸炎は若い人でも発症することがあり、重症度により血便だけの場合もあれば、下痢、腹痛などを伴う場合もあります。「実は数年前から血便が・・・。」という場合は潰瘍性大腸炎を疑うべきです。
虚血性大腸炎は、潰瘍性大腸炎と違い、突然腹痛、下痢、血便が出現します。入院が必要な場合もありますが、数日経過をみればよくなることがほとんどです。
大腸憩室出血は、大腸憩室という大腸壁のくぼみから出血することです。悪性疾患ではありませんが、治療に難渋します。大腸カメラを施行したときは、どこから出血したのかわからなくて、また翌日出血してまたわからなくて・・・、なんていうこともしばしば経験します。手術に至ることは稀ですが、輸血が必要になることはあります。
あまり認知されていませんが、普通の急性腸炎でも出血することはあります。
痔からの出血だと決めつける前に、これらの病気を否定すべきです。
~まとめ~
・血便が出たら、必ず消化器専門外来を受診する。
・大腸カメラをすすめられたら、ためらわずに大腸カメラを受ける。
・自己判断で放置しない。