血便の原因は、大腸がん、潰瘍性大腸炎、急性腸炎、虚血性大腸炎、痔核出血などさまざまです。その中でも、比較的頻度の高い虚血性大腸炎について説明いたします。
虚血性大腸炎は、腸の粘膜の血の流れが悪くなることによって起こる大腸の炎症です。
医学書では、「60歳以上の便秘の女性に多い」とされていますが、頻度は高くありませんが、比較的若い方、便秘でない方なども虚血性大腸炎で受診する方がいます。
症状
下腹部痛、下痢、血便(鮮血)が主症状です。
突然強い腹痛、下痢があり、そのうち血便が出てきた…というのが典型的な経過です。
診断
ほとんどの場合は、症状や経過、お腹の所見(触診)から診断できます。
診断にはCTが有用ですが、症状や経過によっては絶対に必要ということはありません。
大腸カメラで観察すれば、すぐに診断できますが、お腹が痛いときに下剤を飲むのは苦痛ですし、急性期に大腸カメラを行うリスクもあります。ある程度落ち着いた時期を見計らって、念のため、ほかの病気(大腸がん、潰瘍性大腸炎など)を除外するために大腸カメラを行います。
治療
症状がひどい場合は、絶食が必要になるため入院が必要ですが、来院された時点で改善傾向であれば、入院しなくてよい場合もあります。
通常は1週間以内に血便も腹痛も消失します。
予後
この病気自体は命にかかわる病気でなく、輸血が必要になることもほとんどありません。
炎症が強い場合は、まれにその部分が狭くなり、手術が必要になる場合があります。
再発率は、文献により異なりますが、10%前後とされていますが、軽症の場合は受診していないこともあり、実際の再発率はもう少し高いともいわれています。
再発の予防には、便秘にならないよう生活習慣を見直すことが大切です。