人間ドックで、ピロリ菌の血清抗体が高いことを指摘されて受診される方が多く受診されます。
その場合、当院では胃カメラを施行して(すでに施行されている場合は行いません)、尿素呼気試験または便中ピロリ菌抗原検査を行い、その結果を確認したうえでピロリ菌の除菌治療を行っています。
(尿素呼気試験は、薬を飲んで袋をふくらますだけ、便中ピロリ菌抗原検査は便を提出するだけのため、ストレスになるような検査ではありません)。
すると、「血清抗体が陽性と出ているのに、なんでまたピロリ菌の検査をする必要があるのか?」と質問されることがしばしばあります。
日本ヘリコバクター学会では「血清抗体価は、現在のピロリ菌状態を反映するものではないので、血清抗体が陽性というだけで除菌治療を行うことは推奨されず、除菌治療に際しては抗体法以外の検査法のいずれか、または複数を用いて現感染を確認する」と注意喚起しています。
血清抗体法の利用価値は、簡便なことです。採血で測定できるため人間ドックでも実施しやすいのです。
ピロリ菌の除菌治療の前に、胃カメラを受けていない場合は必ず胃カメラを行います。理由は簡単。ピロリ菌の除菌治療は、胃がんや潰瘍などを予防するための治療だからです。胃カメラで、胃がんや潰瘍などの病気がないことを確認します。ピロリ菌の除菌は成功したけど、実は胃がんがあった・・・なんてことがあっては本末転倒です。そもそも、基本的に胃カメラを行わないとピロリ菌の検査や除菌治療は保険適応になりません。
正しい診療には、それなりの理由があります。
ピロリ菌の血清抗体価は、ピロリ菌の現感染(現在感染している状態)だけでなく、既感染(過去の感染)でも陽性になり得ます。よって、何らかの理由がない限り、ほかの方法で現感染か否かを確認することが推奨されています。推奨されるのは、①尿素呼気試験②便中抗原検査です。
何らかの理由により、ピロリ菌の血清抗体が陽性というだけで除菌治療を行う場合、ガイドラインでは、除菌治療後6か月以上経過して測定した抗体価が、除菌前の半分以下に低下していれば除菌成功と判定できることになっています。
当院では、上記の理由により、人間ドックでピロリ菌の血清抗体が陽性といわれても、胃カメラおよび尿素呼気試験等を施行して、除菌治療の必要性を判断しています。