健診で「高尿酸血症」を指摘されて、放置していませんか?
今回は、高尿酸血症について説明します。
高尿酸血症とは?
尿酸値が7.0mg/dlを越えた状態が「高尿酸血症」です。高尿酸血症の状態が続くと、血中に溶けきれなくなった尿酸が結晶となり、全身に蓄積していきます。関節に蓄積して、体がそれを異物として認識して炎症が起こると痛みが生じます。これが痛風発作です。結晶が皮下組織に沈着すれば痛風結節になります。
尿路で尿酸が結晶化すると腎結石、尿管結石、膀胱結石などになります。
痛風や尿路結石のことは皆さんもご存じかと思いますが、痛風腎のことは知らないという方が多いのではないでしょうか。痛風や尿路結石は痛みがあるため、一度発症したら生活習慣を見直すきっかけになりますが、痛風腎は気が付いたら腎機能が低下して、さらに悪化すれば透析になってしまうという怖い病気です。
では、痛風腎とは?
高尿酸血症が長期間持続すると、尿酸が腎臓の髄質にというところに結晶となり沈着し、痛風腎となります。痛風腎が悪化すると腎臓の機能が低下して、慢性腎臓病(CKD)、腎不全になります。また、痛風には高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病を複数合併していることが多く、これらの病気がさらに腎臓をいためつけます。そして最悪の場合、透析になってしまいます。慢性腎臓病の中には、どんなに気をつけても進行してしまう病態もありますが、痛風腎は、基本的に生活習慣の是正と治療により予防あるいは進行を食い止めることができる可能性があります。
尿路結石も腎機能を悪化させる可能性があります。
尿路結石とは?
尿路とは、腎臓で作られた尿が通る器官、具体的には腎臓、腎盂、尿管、膀胱、尿道のことを言います。その尿路できた石を尿路結石といいます。尿路結石が動いたときには、尿路結石が尿管を傷つけるために、血尿が出たり、腹痛や背部痛があります。その痛みは七転八倒するくらいの強い痛みで、冷や汗をかきながら受診される方が多いです。
結石は自然に排出されることもありますが、結石により尿路が閉塞されて尿が滞れば、細菌が繁殖して尿路感染症が発生することがありますし、尿が腎臓内に停滞すれば水腎症になり、腎臓の組織が損傷し腎機能が低下します。尿路結石は痛みだけでは済まないことがあります。
高尿酸血症の治療について
最優先すべきは、肥満、高血圧、糖・脂質代謝異常に配慮した生活習慣の是正です。
日本のガイドラインでは以下のように示されています。
・痛風発作を繰り返す場合、痛風結節を認める場合は、尿酸値を6.0mg/dL以下にコントロールする。
・症状のない高尿酸血症で、合併症(腎障害、尿路結石、高血圧、虚血性心疾患、糖尿病、メタボリックシンドローム)を伴う場合は、尿酸値が8.0mg/dL以上で治療開始が推奨されます。
・症状のない高尿酸血症で、尿酸値が9.0mg/dL以上で治療開始が推奨されます。
高尿酸血症を伴う方は、合併症を伴っていることが非常に多く、尿酸値だけが高いということは実際少ないです。よって、尿酸値が8.0mg/dL以上で治療を開始する場合が多いと言えます。
~まとめ~
・高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病と同様、高尿酸血症も自覚症状がないからと言って放置しないようにしましょう
・尿酸値が高い=痛風ではありません。高尿酸血症は、痛風腎や尿路結石などの原因となり、動脈硬化・狭心症・心筋梗塞・脳卒中等のリスクを高める可能性があります。
・たかが尿酸値と考えず、生活習慣の是正とともに医師に相談をしましょう。