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2024.06.15

高血圧の診断基準はかわっていません

最近、「高血圧の診断基準が160mmHg以上になったから、薬を減らしたい」「薬をやめたい」と複数の患者さんから訴えがありました。

ガイドラインが変わったという話は聞いたことがないけど、私の知識不足なのか…などと考え、調べてみました。そうすると、特定健診の血圧受診勧奨判定値が変更になったことから、高血圧の診断基準が変更になったと誤った報道がされていたようです。高血圧の治療を行っているほかの先生方も、私と同様、患者さんから質問を受けてブログ等で誤解であることを発信しています。
また、これを受けて、日本高血圧学会からもお知らせがありました。

厚生労働省による「標準的な健診・保健指導プログラム」の受診勧奨判定値を超えるレベルの対応について、つまり収縮期血圧≧140mmHg ,拡張期血圧≧90mmHgを超える場合の対応についての内容が以下のようになっています。

●収縮期血圧≧160mmHgまたは拡張期血圧≧100mmHg
→①すぐに医療機関受診を。
*ただし、脳卒中、心臓・腎臓の病気、糖尿病を持っている方は、収縮期血圧≧140mmHg、拡張期血圧≧90でもすぐに医療機関を受診してください。

●140mmHg≦収縮期血圧<160mmHgまたは90mmHg≦拡張期血圧<100mmHg
→②生活習慣を改善する努力をしたうえで、数値が改善しないなら医療機関受診を(おおむね1ヶ月)。

今回の誤解は、①だけが強調されたものと考えられます。
なお、上記内容は、高血圧治療ガイドライン2019年版(最新)の推奨と同じです。

参考までに、横浜市立大学から発表され、「Hypertension Research」に掲載された論文を紹介します。

〇この研究では、高血圧の治療中ではない労働者を追跡調査したもので、「正常高血圧:収縮期血圧120-129mmHgかつ拡張期血圧80mmHg未満」の段階から脳・心血管疾患発症リスクが正常血圧の約2倍に上昇したとしています。血圧がさらに上昇すれば、脳・心血管疾患発症リスクはさらに上昇します。
〇就労世代においては、正常高血圧の段階から血圧管理に取り組むことが重要であるとしています。

高血圧治療ガイドライン2019における血圧分類*2と脳・心血管疾患発症リスク

この研究では、脳・心血管疾患に関する研究ですが、腎機能の悪化を予防するためにも高血圧の治療は大切です。
高血圧に関して、これまでもさまざまな研究が発表され、今後も発表されると思います。エビデンスやガイドラインを無視した報道や記事に惑わされることなく、最適な治療を受けるべきと考えます。

*図は、下記より抜粋。
論文情報 タイトル: Blood pressure classification using the Japanese Society of Hypertension Guidelines for the Management of Hypertension and cardiovascular events among young to middle-aged working adults 著者: Keisuke Kuwahara, Takayoshi Ohkubo, Yosuke Inoue, Toru Honda, Shuichiro Yamamoto, Tohru Nakagawa, Hiroko Okazaki, Makoto Yamamoto, Toshiaki Miyamoto, Naoki Gommori, Takeshi Kochi, Takayuki Ogasawara, Kenya Yamamoto, Maki Konishi, Isamu Kabe, Seitaro Dohi, Tetsuya Mizoue 掲載雑誌: Hypertension Research DOI: 10.1038/s41440-024-01653-3
20240411kuwaharakeisuke.pdf (yokohama-cu.ac.jp)

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