今回は、過敏性腸症候群(IBS)について解説いたします。
まず、過敏性腸症候群の診断基準です。
診断基準
・最近3か月の間に、月に3日以上にわたって腹痛や不快感が繰り返し起こり、
・下記の2項目以上の特徴を示す。
- 排便によって症状がやわらぐ
- 症状とともに排便の回数がかわる。
- 症状とともに便の形状(外観)が変わる(柔らかくなったり硬くなったりする)。
要は、大腸に腫瘍や炎症がないにもかかわらず、腹痛、便秘、下痢などの不快症状が数か月以上続く病気です。
決して珍しい病気ではなく、日本消化器病学会によると、日本人の約10%が罹患しており、20~40代に多い傾向との報告があります。男女比は、2:3程度と女性に多く、男性は下痢型、女性は便秘型が多い傾向にあります。
下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)で、大腸がんや炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)がないことを確認、症状に応じて内分泌疾患(ホルモン異常など)、糖尿病などの検査で異常がないことを確認します。過敏性腸症候群は血液データに異常が見られないため、問診(いつから、どのような、どんなときに症状があるかなど)も診断の重要な手掛かりになります。
男女問わず、若い方は機能的疾患(過敏性腸症候群など)の割合が多く、年齢とともに器質的疾患(大腸がんなど)の割合が増えてきます。ただし、過敏性腸症候群も大腸がんも年齢を問わず否定できず、症状が似ていることがあるため、繰り返し問診したり、必要あれば大腸カメラをおすすめすることがあります。
原因はわかっていませんが、ストレス、腸内細菌叢の変化などが関係しているのではないかと言われています。よって、仕事が忙しくなった、気持ちが落ち込んでいる、胃腸炎にかかったなどがきっかけに発症することが多いです。
治療は、症状に合わせて適切な薬を処方します。最初に処方した薬で症状が改善する場合もあれば、何度も薬の種類や量を調整する場合もあります。薬物療法だけでなく、可能な限り食事、運動、睡眠などの生活習慣の見直しも大切な治療です。
一言・・・
過敏性腸症候群は20~40代の女性に多いと書きましたが、クリニックで診療を行うとそれを実感しています。最近は比較的若い女性も大腸カメラを希望される方が増えています。
私が開院前から抱いていた考えの一つですが、当院では、男女別の更衣室設置、内視鏡のみ女性の日(火曜日)を設定し、不安なく検査を受けて頂けるよう努力しています。
もちろん、男性も安心して検査を受けて頂けるよう努力していますのでご安心ください。