今回は、X線検査と被ばくについて、簡単にご説明いたします。
【X線検査】
放射線(X線)を使用する主な検査に、胸部・腹部X線検査(いわゆるレントゲン)、X線CT検査(CT)、胃透視(バリウム)、マンモグラフィー、心臓カテーテル検査、PET-CT検査などがあります。
X線検査やCT検査をすすめると、「被ばくが心配だから検査を受けたくない。」「この前レントゲンを受けたばかりだけど、CTを受けても大丈夫?」と訴える方がいます。
結果からお話ししますと、適正に胸部X線検査やCTを受けた場合、健康被害を起こす被ばく線量に達することは通常ありません。
もしCTを繰り返し受けることをすすめられるとすれば、検査を受ける利益が、検査を受けない不利益を上回る場合です。正しい知識を持った医師であれば、CTを必要以上に行うことは考えられません。よって、医療被曝に関して言えば、必要以上に心配しない方がよいと言えます。
環境省HPより
環境省HPより
【放射線量と体への影響】
健康被害が起こりえる線量は100~200mSv(ミリシーベルト)以上であると考えられています。
以下に例を挙げます。
・胸部X線撮影→0.06mSv
・X線CT検査→5~30mSv
・100mSv →胎児奇形のリスクがあるかもしれない線量
・200mSv →発がんのリスクがあるかもしれない線量
・250mSv →一時的な白血球の減少
・500~1000mSv →吐き気、嘔吐、倦怠感
・7000mSv →被ばくした99%の人が死亡
200mSv以下の場合は、放射線によりがんになったかわかりません。喫煙、多量飲酒など方が発がんのリスクが高いかもしれません。それより、必要な時にX線検査を受けない方が、発見できる病気を発見できなくなる可能性があります。
放射線と生活習慣によってがんになるリスク |
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放射線の被ばく線量 |
生活習慣因子 |
がんの相対リスク |
1000~2000mSV |
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1.8倍 |
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喫煙 |
1.6倍 |
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飲酒(毎日3合以上) |
1.6倍 |
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痩せ(BMI<19) |
1.29倍 |
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肥満(BMI≧30) |
1.22倍 |
200~500mSv |
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1.19倍 |
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運動不足 |
1.15~1.19倍 |
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塩分の取りすぎ |
1.11~1.15倍 |
100~200mSv |
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1.08倍 |
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野菜不足 |
1.06倍 |
出典:国立がん研究センター |
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相対リスクとは、それぞれの因子を持つ集団がん発生率を、その因子を持たない集団の |
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発生率で割ったもので、その因子のがんに罹る割合が何倍高いかという数値。 |
また、どの文献をみても、日常的に行われているX線検査では、がん、胎児奇形が発生することはないとされています。とはいえ、最近何度もX線検査を受けている、妊娠中などは検査前に必ず申告してください。
〖CTとMRIの違い〗
「この前MRIを受けたけどCT受けて大丈夫?」と質問されることがあります。
CTとMRIの違いは、先に説明したようにCTが放射線を使用しているのに対して、MRIは磁力を使用しています。よって短期間に両方を受けても何ら問題はありません。
「CTをしないで最初からMRIで『詳しく』みてほしい」との訴えもよく聞きます。『MRIの方が精密』と思われていることがあるようです。CTとMRIは特徴、得意分野が違い、医師はそれを使い分けています。場合によっては両方必要なこともあります。
~まとめ~
・日常的に行われているX線検査で健康被害を受けることはない。
・X線検査を受ける必要がある時は、過度に心配せずに検査を受ける。