食道がん
喉と胃の間にある消化管である食道に発生するがんです。進行が速く、転位しやすい傾向がありますが、早期発見できれば完治できる可能性が高くなります。進行するまで自覚症状が現れることが少なく、早期発見には胃内視鏡検査が不可欠です。口腔から食道までは扁平上皮がつながっており、日本人の食道がんは扁平上皮に生じることが多くなっています。喉を含めた扁平上皮にがんが多発することもありますので、当院では胃内視鏡検査の際に喉の粘膜もしっかり確認しています。飲酒や喫煙が扁平上皮がんのリスクとなっており、特にお酒を飲むと顔が赤くなる方はリスクが高いとされています。食道がんには腺がんが生じることがありますが、腺がんは慢性的な炎症がリスクになるという指摘があります。習慣的な飲酒・喫煙される方、お酒を飲むと顔が赤くなる方、逆流性食道炎を繰り返している方には、早めに胃内視鏡検査を受けるようお勧めします。
逆流性食道炎
バレット食道
バレット食道は、食道と胃の分かれ目の部分で、食道の粘膜の一部が胃の粘膜に置き換わる状態です。
バレット食道から食道がんができる可能性はありますが、日本人に多いバレット食道(SSBE)のがん発生率は、年率0.19%と低率です。欧米人に多いバレット食道(LSBE)では、年率0.33~0.55%です。ちなみにピロリ菌陽性者から胃がんが発生するのは、年率0.5%です。
胃潰瘍
胃潰瘍とは、胃の壁が深く傷ついている状態です。症状は、みぞおちの痛み、吐血、黒い便、貧血などです。主な原因は、「ピロリ菌感染」と「非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)」です。ストレス、喫煙などが誘因になります。NSAIDsはいわゆる痛み止め、血をサラサラにする薬の一部です。腰痛、心疾患、脳梗塞等で長期に処方されることもあります。ただ、大切な薬ですので、絶対に自己判断でやめないでください。潰瘍はよくなっても、狭心症が悪化した、脳梗塞を発症してしまった…などということになっては大変です。
胃潰瘍は薬物治療で解消されます。ピロリ菌を除菌することで80%程度、胃潰瘍の再発を予防できます。
胃がん
胃は食道と十二指腸の間に存在する臓器で、その胃に発生するがんが胃がんです。胃がんの発生にはピロリ菌感染、喫煙、高塩分食品などが関与しています。初期には自覚症状がないことがほとんどです。進行すると胃もたれ、腹痛、食欲低下、黒色便、貧血などが出てきます。
胃がんにかかる人が減っているとはいえ、男女ともに罹患数・死亡数の順位が高い疾患です。2020年7月に公開された「最新がん統計」によれば、2018年の男性の死亡数では第2位、女性のがん死亡数では第5位です。
大腸がん同様、胃がんも早期発見により、治癒が期待できる病気です。
胃部不快感、腹痛などの症状がある方には胃カメラをおすすめしますが、特に40歳をこえた方、身内が胃がんになった方は、ぜひ胃カメラを受けることをおすすめします。
胃アニサキス症
クジラやイルカを宿主とする寄生虫で、幼生はイカ・アジ・サバなど食卓に上ることが多い身近な魚介類に寄生しています。アニサキスの幼生に寄生された魚介類を生や加熱が不十分な状態で食べると生きたままのアニサキスが胃の中に入って胃粘膜に食い込み、激しい痛みや吐き気・嘔吐などを起こします。アニサキスは肉眼で確認できるサイズですが、筋肉内に入り込んでいると知らずに食べてしまうことがあります。生魚を食べる場合は中までしっかり火を通すことで予防できます。また、適切に冷凍して解凍してある場合は、刺身で食べても大丈夫です。
アニサキスは人間を宿主にはできませんので1週間程度で死滅します。その間は強い痛みが続きますが、胃カメラでアニサキスを全て取り除くことでほとんどの場合、痛みが速やかに解消します。
機能性ディスペプシア
みぞおちの痛み、胃もたれなどの症状が慢性的に続きますが、胃カメラをしても病変を認めません。蠕動運動などの機能的な問題や知覚過敏などが関与して症状を起こしていると考えられています。適切な治療を受けられないまま慢性的な症状に悩んでいる方がおられます。当院では、症状に合わせて、西洋医学、東洋医学を駆使して治療に当たります。
大腸がん
大腸がんは男女ともに罹患数・死亡数の順位が高い疾患です。2020 年7月に公開された「最新がん統計」によれば、2018年の男性の死亡数では第3位、女性のがん死亡数では第1位です。
最近は、特に動物性脂肪を多くとる方、過度の飲酒される方は、若い方でも大腸がんを発症するリスクが高くなっています。
大腸がんは、早期発見すれば、治癒が期待できる病気です。40歳をこえたら、便潜血反応が陰性であっても一度は大腸カメラを受けることをおすすめします。
大腸ポリープ
大腸憩室症
大腸憩室とは、大腸の壁の薄い部分が大腸の外側に袋状に飛び出している状態です。大腸カメラで見ると窪んでいる状態です。特殊なものではなく、加齢とともに誰でもできる可能性があります。がん化するものではありませんが、憩室内で出血したり、炎症を起こすことがあります。その際は主に内科的治療が必要になります。
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に慢性的な炎症を起こす病気です。便潜血陽性、下痢、血便で来院される方が多いのですが、悪化すると腹痛や発熱などの症状を伴ってきます。この病気は原因不明で、難病に指定されています。発症からの期間が長くなると大腸がんのリスクが高くなることが知られています。診断から10年で1.6%, 診断から20年で8.3%です。炎症範囲が広いことも大腸がんのリスクになります。ただし、潰瘍性大腸炎を発症した方と、そうでない方では、寿命に差はありません。治療により症状が改善しても治る病気ではありませんが、コントロール可能な病気ですので、必ず定期的に通院することが大切です。
クローン病
クローン病は、小腸と大腸を中心に口から肛門までの消化管全域に炎症を起こす可能性がある病気です。潰瘍性大腸炎と似たような症状で来院する方もいますが、痔瘻や腸閉塞などで来院される方もいます。クローン病も難病に指定されています。薬物療法や栄養療法が必要なことや症状を繰り返すことが多いことから、専門病院で治療されることが多い病気です。クローン病の可能性が高いと判断した場合には、専門病院にご紹介させていただきます。
虚血性腸炎
虚血性腸炎は、大腸の粘膜の血流が一時的に滞ることで発症する病気です。症状は腹痛、血便です。軽症の場合は数日で症状が消失しますが、重症の場合は入院治療が必要になります。
過敏性腸症候群
過敏性腸症候群(IBS)は、大腸カメラを行っても異常がないにもかかわらず、腹痛、下痢、便秘などの症状がつづく病気です。ストレスや胃腸炎後に発症することが多く、蠕動運動障害、知覚過敏などが関与しています。同じような症状でほかの腸の病気の可能性もあるため、大腸カメラを行うことがあります。